言語文化研究所主催講演会

2021年度 言文研主催講演会

日時:2021年124日()10:00-11:30
場所:オンライン
講師:バトラー後藤裕子氏(ペンシルバニア大学)
タイトル:デジタル時代に必要な言語能力

【講演概要】

私たちは今、デジタル・テクノロジーが加速的に進化する激動の時代を生きています。多くの子どもたちは非常に早い段階からスクリーン・メディアに触れ、小学生、中学・高校生と年齢が上がるにつれ、SNSやゲームに多くの時間を費やすようになっています。人工知能も日常生活の多くの場面で使われるようになりました。つまりデジタル・テクノロジー は、私たちのコミュニケーションの仕方を大きく変えているのです。このことは、言語学習の手段に影響を与えるだけでなく、目標とする言語能力そのものにも、新しい捉え方が必要になってきていることを意味します。ではデジタル・テクノロジー進化時代に必要な言語能力とはどのようなものなのでしょうか。本講演では、生まれた時からデジタル・テクノロジーが身近に存在していた世代(2000年前後以降に生まれた人たち)を便宜上「デジタル世代」と呼び、この世代のデジタル・テクノロジー使用と、それによる彼らの認知・社会発達上の特徴を踏まえた上で、今後ますます進化するデジタル時代に必要なコミュニケーション能力とは何かを考えてみたいと思います。


【講師略歴】
ペンシルバニア大学教育学大学院言語教育学部教授。同校Teaching English to Speakers of OtherLanguages (TESOL)プログラムディレクター。東京大学文学部卒業後、スタンフォード大学教育学大学院でPh.D. (教育心理学)を取得。専門は子どもの第二言語習得・言語教育および言語アセスメント。主著には、『多

言語社会の言語文化教育』(くろしお出版、2003)、『日本の小学校英語を考える』(三省堂、2005)、『英語学習は早いほど良いのか』(岩波新書、2015)、『デジタルで変わる子どもたち ――学習・言語能力の現在と未来 』(ちくま新書、2021)など。


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2021年度 英語英文学科主催講演会・言文研協力

日時:2021年119日()16:20-17:50場所:オンライン講師:ロジャー・パルバース氏(作家・翻訳家・映画監督)タイトル:日本語と英語のサブカルチャー:翻訳は、原文よりよくないとダメだ!

【講演報告】

パルバース先生は1967年の夏に日本に初来日されて以来、宮沢賢治や石川啄木をはじめ、これまで数多くの日本文学を英訳されてきました。講演会では、パルバース先生ご自身の日本での経験を交えつつ、知的でウィットに富んだ翻訳論をお聴かせ下さいました。パルバース先生によると「言葉は情報の量子」であり、単語を翻訳する際は、その意味だけでなく、トーンやリズム、ボイス、ロジックにも配慮する必要があります。日本語と英語は異なる言語使用域(register)を有しているので、ただ直訳するだけでは非忠実な翻訳になってしまうそうです。この言語使用域の差異を補う翻訳こそ、直訳よりも忠実な翻訳になり得るのだそうです。例えば、宮沢賢治の詩の「雨ニモマケズ/風ニモマケズ」という有名な冒頭の一節は、通常否定形で英訳されますが、パルバース先生の場合、“Strong in the rain / Strong in the wind”と肯定形で訳されています。宮沢賢治の弟さんによると、賢治は虚弱体質であったため、雨や風に対して特別恐怖心を抱いていたそうです。パルバース先生の翻訳には、賢治の雨や風に立ち向かう意志の強さを殊更感じることができます。講演の最後に、パルバース先生は翻訳家と恐山のイタコを比較され、「翻訳家もトランス状態に入らないと良い翻訳ができない。原文に取り憑かれ、音、リズム、トーンの全てを意識すべき」と仰っていたのが印象的でした。機械翻訳の利便性が脚光を浴びている今日ですが、元来の意味での翻訳とは、言葉、作品、作家に真摯に向き合い、理解し、表現する慈愛行為であると感じました。(円浄)

【略歴】

ジャー・ パルバース氏(ROGERPULVERS) は、 アメリカ合衆国出身のオーストラリアの 作家 、翻訳家 、劇作家、 演出家、映画監督。東京工業大学名誉教授 。ニューヨークでユ ダヤ人の家庭に生まれる。カリフォルニア大 学ロサンゼルス校を卒業後、ハーバード大学大学院に入学。1967年に初来日。京都に居を定め、京都産業大学 でロシア語やポーランド語の講師を務めた。1972 年にキャンベラのオーストラリア国立大学に赴任し、日本語や日本文学を講義 。1983 年製作の映画『戦場のメリークリスマス』で大 島渚の助監督を務めた後、再び来日し、演劇活動を行う。1992年製作の映画『 SEEINGR ED(原題 : 日本未公開)』において脚本を執筆(監督:バージニア・ラウス)。2007年製作の映 画『 明日への遺言』において、監督・小泉堯史と共同で脚本を執筆。2008年、第18回宮沢賢治賞を受賞。2013年まで、東京工業大学 教授 、世界文明センター長 。同年「雨ニモマケズ」の翻訳で第19回野間文芸翻訳賞受賞 。 同年製作のドキュメンタリー映画『 僕が ジョンと呼ばれるまで』において、構成を担当(監督・太田茂 風間直美)。2015年、第9回 井上靖賞を受賞。2017年製作の映画『STAR SAND ─ 星砂物語 ─ 』で初監督を務める。 原作は自身の執筆による小説『星砂物語』。2018年、旭日中綬章受章。2019年、オーストラリア勲章受章。


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2020年度 言文研主催講演会

日時:2020年11月26日()16:20-17:50
場所:オンライン
講師:山内久明氏(東京大学名誉教授)
タイトル:英国詩人アントニー・スウェイトの軌跡

【講演概要】
激動の 20 世紀前半を経て、第 2 次世界大戦の終結とともに植民地が独立し、「福祉国家」の建設に専念したイギリスは、ある意味で「内向き」になったと言われます。その文化風土の中で、詩に関して言えば「ムーヴメント」の名で呼ばれた作家たちが出現し、フィリップ・ラーキンの詩業において高みに達しました。8 歳年下のアントニー・スウェイト(Anthony Thwaite1930- )は、ラーキンを意識しながら詩人として出発し(のちにラーキンの『全詩集』を編纂)、多彩な文学活動に携わりながら、多様なテーマとスタイルの詩を書きつづけ、独自の境地を開拓しました。個別詩集は 20 冊にのぼり、『全詩集』(2007)があります。1955 年初来日、2 年間東京大学で教えて以来、スウェイトは日本との絆を強め、活動の一環として日本文化を世界に伝え、『ペンギン叢書版日本詞華集』の共編者としても知られています。日常的な設定、平明な語彙、精巧な様式を用いて書かれたスウェイトの詩は読者の心に迫る真実を伝えます。本日の講義では、スウェイトの詩人・文学者としての軌跡の一端を辿り、代表作を選んで読み解き、この詩人が皆さまにとって心の友であると感じていただけるように努めたいと思います。

【講師略歴】
元津田塾大学専任講師(1964-67)。東京大学名誉教授。Ph.D. (英文学、ケンブリッジ大学)

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2019年度 言文研主催講演会

日時:2019年12月20日(金)13:00-14:30
場所:津田塾大学小平キャンパス 本館H315小講堂
講師:池上嘉彦氏(東京大学名誉教授)
タイトル:日本語は<悪魔の言語>という言説をめぐって―文化的偏見、言語的相対論、言語・文化の多様性との関連での考察―

【講演概要】
ふと思い立って訪れたフランスのバスク地方。そこのバスク民族博物館(Museé Basque et de l’histoire de Bayonne / Balonako Euskal Museoa)で、「悪魔のサタンはかつて日本にいた、そのあとでバスクの土地にやって来た。」と記された展示に接して、びっくり仰天したことがあります。一体どこから、どうしてそんな言説が生まれたのか? 帰国後、図書館で文献を調べ、そして辿り着いたのは、かつて大航海時代、日本での布教を志してこの異国の島を訪れたイエズス会の宣教師たちのこと。彼らが眼にしたのは、風変わりで複雑な文字を持つ「ニホンゴ」という言語——これこそ、布教を妨げるべくなした悪魔サタンの仕業に相違ないと考えたとのこと。ここまでなら、他愛のない話と笑い飛ばしておけばよいと思えるのですが、実はこの言説の背後には途方もなく「邪悪な思い」が隠されていたのです。つまり、かかる「悪魔的」な言語を話す者たちは、すべからく武力でもって制圧、キリスト教に改めさせるべしという使命を生むという論理です。このような過激な文化的偏見もあったことを念頭に、そのあとは、日本語とはどういう言語なのかという難しい問いかけに、いくつかの真面目なコメントを述べさせていただきたいと思っています。

【講師略歴】
東京大学名誉教授、昭和女子大学名誉教授、日本認知言語学会名誉会長。著書に、『英詩の文法』(研究社 1965)、『「する」と「なる」の言語学』(大修館書店 1981)、『ことばの詩学』(岩波書店 1982)、『記号論への招待』(岩波書店 1984)、『英語の感覚・日本語の感覚』(日本放送出版協会 2006)、『日本語と日本語論』(筑摩書房 2007)など多数。

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2018年度 言文研主催講演会

日時:2018年12月15日(土)13:00-14:30
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス 広瀬記念ホール
講師:苅谷剛彦氏(オックスフォード大学教授)
タイトル:大学を学ぶ・大学で学ぶ

【講演概要】
大学とは何か。大学で学ぶとはどういうことか。グローバル化と呼ばれる現象が、人びとの耳目を集める中で、大学教育の目的、質、教授学習法などが問われている。他方で、大学のグローバルランキングへの注目が集まったり、グローバル人材の育成が大学に求められたりもする。このようななかで、あらためて大学で学ぶこととは何かを批判的・反省的に考えてみたい。それは同時に、「大学とは何か」という問いと密接に関係するはずである。この講演では、私自身のUniversity of Oxfordでの教育研究の経験を振り返りながら、日本で「大学」と呼ばれる制度や組織、学びの場所がどのような特徴を持つのかを「半ば外部の眼・半ば内部の眼」の複眼でとらえ直してみたい。日本で「大学」と呼ばれるところがイギリスでuniversityと呼ばれるところとどこがどう違うのか、そこに目を向けながら、大学で学ぶこと、大学について学ぶことを一緒に考えてみたい。


【講師略歴】
オックスフォード大学社会学科およびニッサン現代日本研究所教授、セント・アントニーズ・カレッジ・フェロー。著書に『大衆教育社会のゆくえ』、『教育の世紀』(サントリー学芸賞受賞)、『階層化日本と教育危機』(大佛次郎論壇奨励賞受賞)、『なぜ教育論争は不毛なのか』『教育と平等』など多数。「グローバル化時代の大学論」シリーズに『アメリカの大学・ニッポンの大学』『イギリスの大学・ニッポンの大学』『オックスフォードからの警鐘』がある。

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2017年度 カズオ・イシグロノーベル文学賞受賞記念連続講演会・言文研共催

日時:2017年12月9日(土)11:00-12:30
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス 広瀬記念ホール
講師:中村和恵氏(明治大学教授・詩人)
タイトル:いかに・と・なにをー世界文学の主題

【講師略歴】
ことば使い、エッセイスト、詩人、比較文学研究者、明治大学教授。著書に『降ります』『地上の飯』(平凡社)、『日本語に生まれて』(岩波書店)、『世界中のアフリカへ行こう』(共著、岩波書店)、詩集『トカゲのラザロ』『天気予報』(ともに紫陽社)、訳書にアール・ラヴレイス『ドラゴンは踊れない』(みすず書房)、トレイシー・ K ・スミス『火星の生命』(平凡社)など。

 12月9日、「カズオ・イシグロノーベル文学賞受賞記念連続講演会」第三回が言文研と共催で開催されました。詩人・明治大学教授でいらっしゃる中村和恵先生が「いかに・と・なにをー世界文学の主題」と題して、とても刺激的かつ笑いの溢れる楽しいご講演をしてくださいました。『日の名残り』の映画や主要作品の一部をご紹介くださり、いかにイシグロ文学の中に不思議な「世界」がたくさん隠されているかに気づかされた聴衆は皆、深く頷きながらイシグロの新たな魅力にとりつかれ、アッという間に時間が過ぎてしまいました。

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(文責:菅 靖子)

2016年度 言文研主催講演会

日時:2016年12月9日(金)10:30-12:00
場所:津田塾大学小平キャンパス 5号館 5102教室
講師:窪薗晴夫氏(人間文化研究機構 国立国語研究所 教授)
タイトル:日英語の頭韻と音節構造

【講演概要】
英詩や諺から標語、芸名、キャラクター名に至るまで、英語の言語文化には頭韻という技法が浸透している。たとえばハリーポッターの小説には「禁じられた森」(Forbidden Forest)、「暴れ柳」(Whomping Willow)、「逆転時計」(Time Turner)のように、頭韻がまるで言葉遊びのようにちりばめられている。本講演では、英語に広範囲に見られる頭韻の現象を日本語の頭韻と比較し、両者の違いをもとに日英語の音節構造の違いを考察する。またこの音節構造の違いが、日英語の言い間違いや吃音、言葉遊びといった言語現象にも顕著に見られることを論じる。

【講師略歴】
1957年、鹿児島県(薩摩)川内市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)、名古屋大学大学院で英語・英語学を学んだ後、英国エジンバラ大学大学院で言語学・音声学を学ぶ(1988年、言語学Ph.D.)。南山大学外国語学部、大阪外国語大学、神戸大学大学院人文学研究科を経て、2010年4月より人間文化研究機構・国立国語研究所教授、2015年4月より日本言語学会会長。専門は言語学・音声学、主に日本語の音韻現象を対象にして、言語の普遍性と個別性を研究している。 主な著書:The Organization of Japanese Prosody、『語形成と音韻構造』(くろしお出版)、『日本語の音声』、『新語はこうして作られる』、『アクセントの法則』『数字とことばの不思議な話』(岩波書店)。

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2015年度言文研講演会(英文学科副専攻 翻訳・通訳コース共催)

日時:2015年11月23日(月)13:00-14:30
場所:津田塾大学小平キャンパス 本館H315小講堂
講師:池澤夏樹氏(作家、翻訳家) 聞き手・司会:アーサー・ビナード氏(作家、翻訳家)
タイトル:日本語とは何か、そして日本人とは何ものか

【講師略歴】
●池澤夏樹氏
作家。1945年北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。以後、多くの旅を重ね、3年をギリシャで、10年を沖縄で、5年をフランスで過ごして、今は札幌在住。1987年に『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』、『花を運ぶ妹』、『静かな大地』、『キップをなくして』、『カデナ』など。東北大震災に関わる著作に長篇エッセイ『春を恨んだりはしない』と小説『双頭の船』がある。最新作は小説『アトミック・ボックス』。2011年に完結した『池澤夏樹=個人編集世界文学全集』に続いて、2014年11月より『池澤夏樹=個人編集日本文学全集』を刊行している。

●アーサー・ビナード氏
1967年米国ミシガン州生まれ。高校時代から詩作を始め、ニューヨーク州コルゲート大学英米文学部を卒業。1990年に来日後、日本語での詩作を始める。2001年、第一詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞受賞。『日本語ぽこりぽこり』(小学館)で講談社エッセイ賞、『ここが家だベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)で日本絵本賞、詩集『左右の安全』(集英社)で山本健吉文学賞、『さがしています』(童心社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。ほかに詩集『ゴミの日』(理論社)、翻訳詩集『ガラガラヘビの味』(共訳・岩波書店)、絵本に『くうきのかお』(福音館書店)、エッセイ集に『日々の非常口』(新潮文庫)、『空からきた魚』(集英社文庫)、『もしも、詩があったら』(光文社)、英訳詩集に『ひとのあかし』(清流出版)など多数。2012年に広島文化賞を受賞。

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2014年度 言文研主催講演会

日時:2014年12月20日(土)13:00-15:00
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス 1階会議室(T101・102)
講師:山極寿一氏(京都大学総長)
タイトル:家族の由来と未来

【講演概要】
現代の人間は、家族とそれがいくつか集まった共同体という重層的な構造をもつ社会で暮らしている。この家族と共同体はその基礎となる社会性が異なり、ときとして相反することがある。家族は利益を考えずに奉仕し合い、共同体は優劣や互酬性によって構造化される性格をもつからである。この二つを両立させるのは人間の高い共感能力であり、それを欠いているために人間以外の霊長類は家族か集団のどちらかの社会性に依存して暮らしている。人間が高い共感力を発達させたのは、類人猿が出ることができなかった熱帯雨林から乾燥草原へと進出したことがきっかけとなり、4回にわたる食料革命を経て不思議な生活史戦略とコミュニケーション技術を生み出したためである。それが近年のIT技術とグローバル化によって危機に瀕している。私たちが信頼できる豊かな社会を作るためにこれから何をしたらいいのか、家族の由来と未来を見据えながら考えてみたい。

【講師略歴】
京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンターリサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、同大学大学院理学研究科助教授、同研究科教授を経て、2014年10月に京都大学第26代総長に就任。ゴリラの住むアフリカでのフィールドワークを重ね、初期人類の生活様式や社会性の解明を目指す。ゴリラの社会から人類の起源、人間社会をみる視点をもち、教育論、家族論、コミュニケーション論、父親論、環境問題、自然保護、戦争、平和等、広い分野にわたり造詣が深い。野生動物の保護、自然保護運動でも国際的に活躍している。著書は『暴力はどこからきたか』『人類進化論』『家族進化論』等、幅広い分野に関わる人間社会に鋭い示唆をあたえるものから、小・中学生用にわかりやすく書かれたゴリラの本(『15歳の寺子屋ゴリラは語る』他)や子供向け絵本(『ゴリラとあそんだよ』他)にいたるまで多数ある。

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2013年度 言文研主催第一回講演会

日時:2013年11月8日(金)18:00-19:30
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス 津田ホール1階会議室(T101・102)
講師:Eva Hoffman氏(作家)
タイトル:Between Worlds, Between Words: On Becoming a Writer in a Second Language 祖国喪失と新たな言語の獲得を通して歴史と向き合う激動の半生からいま、第二言語で書き続ける経験を語る

【講演概要】
祖国ポーランドと母語を喪失した一人の“exile”として、他者言語であった英語を新たな「言語」として獲得する経験は、二つの相異なる世界と時間を自分の中に存在させる営みとなった。文化的、言語的、社会的葛藤を語る試みとしての自伝は、文化を渡ること(transculturation)そして自己翻訳(self-translation)の軌跡だったといえる。そこで個人の物語は、他者と共有できる言説となり、喪失の裂け目が、新しい文学の道を拓いた。二つの言語のせめぎ合い、過去と時間のせめぎ合い、それは20世紀文学において、普遍的な“exile”としての人間の経験を、新たな言語空間に創造しているのではないか。それが、作家の仕事だといえるだろう。

【講師略歴】
ユダヤ人の両親のもとにポーランドのクラコフにうまれ、13歳の時カナダに移住。アメリカのライス大学で英文学を学びハーバード大学大学院で博士号を取得。1979年から1990年までニューヨーク・タイムズ紙の編集者として活躍。その後、自伝
Lost in Translation: A Life in a New Language(1989)で高い評価を得て作家生活にはいる。代表作After Such Knowledge: A Meditation on the Aftermath of the Holocaust(2002)は、ホロコーストの第二世代として戦後から半世紀の世界の変動を多角的に捉えた興味深い著書である。他にExit Into History; A Journey through the New Eastern Europe(1993),The Secret(2001)[小説],Time; Big Ideas Small Books(2009)など。英米の大学で客員教授としてCreative Writingを教えるほか、ポーランド、南アフリカなど、海外各地で精力的に講演を行っている。今回の初来日では、アメリカ人詩人アーサー・ビナードとの広島訪問のほか、遠藤周作文学への関心をもとに長崎を歩き、また福島では詩人若松丈太郎との連詩の試みなど、新たな創作活動を展開する。

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2013年度 言文研主催第二回講演会

日時:2013年11月16日(土)14:00-16:00
場所:津田塾大学小平キャンパス 7号館 中島ホール
講師:酒井邦嘉氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)
タイトル:人間の言語の基礎とは

【講演概要】
人間を他の動物と分ける3つの要素は、「言葉の使用・道具の使用・火の使用」だと言われるが、実はどれも不十分な答である。これらの要素はすべて、言語の本能が人間の脳に備わっていることに関係している。文を理解している時の脳の活動の様子を実際に測ることで、文法に特化した場所(文法中枢)が明らかになっている。我々のグループは、脳活動の個人差を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調べ、文法や文章理解などに関係する複数の脳部位(言語野)を特定してきた。講演では、文の木構造の計算原理を解明した最新の知見を紹介しながら、人間の言語の特異性について議論したい。

【講師略歴】
1992年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士。1992年東京大学医学部 助手、1996年マサチューセッツ工科大学 客員研究員、1997年東京大学大学院総合文化研究科 助教授・准教授を経て、2012年より現職。2002年第56回毎日出版文化賞、2005年第19回塚原仲晃記念賞を受賞。専門は言語脳科学および脳機能イメージング。著書に『言語の脳科学』、『科学者という仕事』(中公新書)、『脳の言語地図』、『ことばの冒険』、『こころの冒険』(明治書院)、『脳を創る読書』(実業之日本社)などがある。

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2012年度 言文研主催講演会

日時:2012年11月25日(日)14:00-15:30
場所:津田塾大学小平キャンパス 1号館1階 大会議室
講師:油井大三郎氏(東京女子大学教授 東京大学・一橋大学名誉教授)
タイトル:アメリカのオリエンタリズム再考ーアメリカと中東の共存はどうすれば可能かー

【講演概要】
アメリカで制作されたムハンマドの映像を侮辱的として反米デモがイスラーム地域で広がっている。9.11以来深刻化した溝はなおひらいたままの状態にある。アメリカの中東認識の問題点を検証しながら、アメリカと中東の共存可能性という難問を考えてみたい。

【講師略歴】
アメリカ現代史、日米関係史を専門とし、主な著書に、『戦後世界秩序の形成―アメリカ資本主義と東地中海地域、1944-47』(東京大学出版会、1985年)、『なぜ戦争観は衝突するかー日本とアメリカー』(岩波現代文庫、2007年)、『好戦の共和国アメリカー戦争の記憶をたどるー』(岩波新書、2008年)ほか。

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2011年度 言文研主催講演会

日時:2011年10月30日(日)14:00-15:30
場所:津田塾大学 小平キャンパス 1号館1階 大会議室
講師:Mona Baker氏(英国マンチェスター大学 翻訳と異文化研究センター教授、
The Translator⦅セントジェローム出版、1995年~⦆の創刊者兼編集者、IATIS⦅翻訳と異文化研究の国際交流会⦆副会長)
タイトル:Contesting and Contested Narratives: English as a Lingua Franca of Global Conflict

【講演概要】
現代社会は、グローバルな衝突の界面にあり、人間はたえずその力学に晒されている。翻訳はその界面において、鬩ぎ合う双方の立場を正当化する機能を負っている。とくに政治的衝突や紛争が限定的な地域の文脈のみで解決されず、実際に国際関係の領域に拡大されている現実の中で、世界共通語としての英語が、翻訳・通訳行為の大部分を担っている。本講義では、衝突し競合し合うナラティヴが、世界共通語としての英語の翻訳・通訳行為を通してどのように相互に論理的交渉を可能にしていくのか、ナラティヴ理論のアプローチから考察する。

【講師略歴】
1997年、マンチェスター大学に翻訳と異文化研究センターを設立。これまでナラティヴ理論の観点から紛争のコンテクストや政治的な役割を果たす通訳・翻訳行為の研究に取り組み、現在ではコーパスを用いた新たな翻訳研究を試みている。翻訳・通訳研究の最前線で活躍し、マンチェスター大学で教授として籍を置きながらも、世界中で講演・講義などを行っている。
In Other Words: A Coursebook on Translation(2011),Translation and Conflict: A Narrative Account(2006)など著書多数。

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2010年度 言文研主催 津田塾大学創立110周年記念シンポジウム

日時:2010年9月20日(月)13:00-14:30
場所:津田塾大学小平キャンパス AV Center 5101教室
講師:Deborah Cameron氏(オクスフォード大学教授)
タイトル:Sex on the Brain: Language, Sex/Gender and the New Biologism

【講演概要】
Q: What do women do three times as much as men every day?
A: Talk!
This 'fun fact' was printed on a bottle of shampoo which a friend of mine's husband recently purchased. It isn't actually a fact at all, but it has become a sort of 'urban legend,' something everyone has heard and many people are inclined to believe, thanks to its well-publicized appearance in a supposedly scientific book about the workings of the female brain. This sort of thing is a sign of the times. In recent years, discussions of language and gender that would once have revolved around the idea of cultural differences have come to be framed, more often than not, in terms of biological sex differences: the talk is all about genes and horomones and brain-wiring. In this lecture I will examine the resurgence of a new biologism in both academic and popular discourse, asking what might lie behind it and whether its claims stand up to scrutiny.

2009年度 言文研主催講演会

日時:2009年12月23日(水) 13:00〜15:00
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス津田ホール T101・102教室
演題:脳の発達と外国語学習−学童期の縦断研究−
講師:萩原裕子氏(首都大学東京大学院人文科学研究科教授)

【講演概要】
子供の脳はどのようにして「ことば」を生み出していくのだろうか。学童期における外国語学習の過程を、脳機能イメージングにより3年間追跡調査した。その成果をもとに、生物学的制約と環境との相互作用から生み出される「ことば」と脳の関係を探る。

【講師略歴】
カナダ・マッギル大学大学院言語学科博士課程修了(Ph.D.) 日本語の文字処理、失語症の文法障害、文章理解の脳内基盤など、長年にわたり脳と言語の研究に携わる。金城学院大学助教授、東京都立大学助教授を経て、2005年より現職。2005年より(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター研究領域「脳科学と教育」の研究代表者として、脳機能にもとづいた幼児と学童の言語習得に関するコホート研究を推進する。著書:『脳にいどむ言語学』 岩波書店 1998年など。

2008年度言文研主催講演会 第1回

日時:2008年10月19日(日) 14:00〜15:30
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス津田ホール T101・102教室
演題:「21世紀の国家とアイデンティテイ」
講師:姜尚中氏(東京大学大学院教授)

 政治思想家として高名な姜尚中先生を講師に迎えて、2008年度の言語文化研究所主催講演会が開催され、富山太佳夫氏(青山学院大学教授、言文研早川プロジェクトメンバー)、鵜飼哲氏(一橋大学教授)、萱野稔人氏(本学准教授)の3氏を質問者として、姜先生との対話がなされた。

 最初に、姜尚中先生から、現在の時点での国家とアイデンティティの関わりについて、先生の個人的な経験を交えつつ講演が行われた。本学とも関わりの深いダグラス・ラミス先生の思い出から語り起こされた姜先生は、21世紀を前世紀から連続したパースペクティヴに収めるために、ラミス先生の師でもあったアメリカの思想家シェルドン・ウォーリンの歴史観に触れられた。ウォーリンは、20世紀における戦争のための総動員体制と福祉社会システムの通底性、「戦争国家」と「福祉国家」の同一性を指摘していた。その枠組みとしての「国民国家」においては、個人のアイデンティティと国家の同一性が一致していた。このような体制下では、例えば在日の人々は、余計者として排除されてしまう。

 だが、包摂と排除が表裏一体となったこのような体制と、それが保証していた固定したアイデンティティは、70年代後半以降のネオリベラリズムの台頭によって、徐々に崩壊してきている。国際的にみれば、経済においてはハイエクやフリードマンのノーベル賞受賞、政治の局面においてはイギリスのサッチャー(1979年)とアメリカのレーガン(1980年)の登場など、1979年前後を「ポスト社会主義」時代の始まりであるとすれば、この同じ年にはテヘランでイスラム革命が起こってもいる。すなわち原理主義の登場であり、宗教がアイデンティティの重要な構成要素となる時代の到来である。

 国民国家の枠組みの崩壊と資本のグローバル化にさらされる現在、多様化したアイデンティティをどのように再定義してゆくことができるのか。ここで例として挙げられたのは、2000年に訪問されたアルゼンチンの事例である。中南米では、21世紀初頭ですでに政策の失敗により経済が破綻し、中産階級が崩壊した。その一方で、アルゼンチンは長い歴史を持つ多民族・多宗教社会でもあり、ゴミ拾いをしてなんとか生計を立てる「カルトネロス」と呼ばれる人々の集うスラムでは、固定したアイデンティティの崩壊とともに、国家の枠組みが外れたなかでの越境、真の意味で「パブリック」な自生的なネットワークの生成が観察された。グローバリゼーションの渦が破壊し、周縁へと追いやる人々のなかから立ち上がる新しいネットワークと、アイデンティティの再編成の可能性に希望を託して講演が締めくくられた。

 姜先生による講演の後、三人の登壇者によって応答が交わされた。本学の萱野先生は、講演を現在の金融危機というアクチュアルな話題と結びつけ、アメリカ主導の戦争経済の崩壊後にとられるアメリカの次の一手に注目を促した。鵜飼先生はハンナ・アーレントやガヤトリ・スピヴァクの思想との共鳴を指摘し、例えば国旗・国歌などのシンボルを通じた国民統合の批判を検討された。富山先生はさらに長いパースペクティヴから、植民地主義や奴隷制の歴史を経て、キャリル・フィリップスのようなポストコロニアル作家の創作活動へと議論を結びつけた。アイデンティティの問題は同時に「ホーム」の問題でもあり、姜先生の言葉によればグローバル化によっていわば誰もが「ホームレス」と化しかねない現在、「21世紀の国家とアイデンティティ」という問題意識がますます先鋭化することが確認されて、講演会が締めくくられた。

(文責:秦 邦生)

2008年度言文研主催講演会 第2回

日時:2008年12月12日(金) 16:30〜18:30
場所:津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス津田ホール T101・102教室
演題:メディアデザインの果たす役割——写真と文字のコミュニケーション
講師:宮崎紀郎氏(千葉大学工学部元教授)

【講師略歴】
千葉大学工学部工業意匠学科卒業。博士(学術)。千葉大学工学部教授を経て現在千葉大学グランドフェロー。日本デザイン学会名誉会員、JPC(Japan Packaging Competition)審査委員長。デザイナーとして、金融庁シンボルマーク(2000年)や千葉県がんセンターシンボルマークデザイン(1996年)など数々のデザイン制作を手がける。2005年から開発に携わった携帯電話ディスプレイ用の新書体「ユニバーサルデザインフォント ユニタイプ」は携帯業界でシェア5割を占める文字表示ソフトに使用され、現在新機種の携帯に登場し始めている。主著は『インダストリアルデザインーその科学と文化』、『デザイン事典』(いずれも共著)ほか。

2007年度言文研主催講演会

講師:平高史也氏 (慶応義塾大学総合政策学部教授)
演題:「多言語社会日本における言語教育政策のありかたを考える‐ヒューマンセキュリティの視点から」

【講演内容】
外国人住民の急増によって、日本社会は多言語化したといわれます。しかし、私たちはほんとうに多様な価値を認めるようになったのでしょうか。講演では、言語がヒューマンセキュリティに資するリソースであるという立場に立ち、多言語多文化社会における言語教育政策のありかたを考えます。

日時:2007年12月13日(木) 14:00−16:00

場所:津田ホール(千駄ヶ谷駅前) 1階 T101・102教室


【講師略歴】
慶應義塾大学総合政策学部教授。専門はドイツ語教育、日本語教育、社会言語学。東京外国語大学外国語学研究科修士課程ゲルマン系言語専攻を修了後、ベルリン自由大学で文学博士号を取得。主著は『外国語教育のリ・デザイン』、『多言語社会と外国人の学習支援』(いずれも共編著)ほか。現在、日本独文学会会長。

2006年度言文研主催講演会

日時:2006年11月11日(土) 14:30−16:30
場所:津田塾大学1号館大会議室
講師:若桑みどり先生(千葉大学名誉教授)
演題:「戦う女‐ジャンヌ・ダルクの史実と表象」
ジャンヌ・ダルク:その「史実」と「表象」—ジェンダー史の視座から—

 講師に若桑みどり氏(千葉大学名誉教授、ジェンダー文化研究所所長)を迎え、「ジャンヌ・ダルク:その「史実」と「表象」—ジェンダー史の視座から—」と題し、歴史的、文化的文脈のなかでジャンヌ・ダルクが史実と離れ、どのように表象されてきたかをジェンダーの視点で分析する講演が行われた。

 まず理論的前提として、歴史とは何か、ジェンダーとは何か、表象は何か、という3点について確認することから講演は始まった。歴史は実在ではなく、「錯綜した状況をある視座から問題化して記述するもの」であり、歴史もまた「作られるもの」であるということが論じられ、ジェンダーは「生物的実態ではなく、想像されたもの」であるという定義が行われた。表象は「観念を実体的形象によって人間の心性に刷り込む手段としてもっとも有効で普遍的な手段」という説明がなされた。近年のジェンダーに対するバックラッシュの状況についての鋭い批判も織り交ぜながら、講演は冒頭から刺激的であった。

 つづいて歴史、ジェンダー、表象の複合した関係を考察するために、15世紀に実在した女性兵士ジャンヌ・ダルクが、あらゆる党派からいかに有効な記号として扱われてきたか、という議論に入った。政治的問題と宗教的問題、さらにジェンダー的問題という観点から、表象としてのジャンヌ・ダルクの分析が行われた。政治的には、イギリスとフランスの領土抗争の渦中にあってフランス軍指揮者であったジャンヌ・ダルクは、英仏で真っ向から対立するイメージが植え付けられた。宗教的には、カトリック教会は女性が教会の仲介なしに霊感を受けたことを認めず、異端とみなした。ジェンダーの観点からみれば、ジャンヌ・ダルクは男性性の聖域である軍事に介入し、男性兵士を指揮し、男性には不可能であった勝利を遂行し、家父長制社会の秩序の破壊者として糾弾されたといえる。とりわけ興味深いのは、ジェンダー的問題からみたとき、イギリス側もフランス側も、ジャンヌ・ダルクの生存を望まなかったことである。

 ジャンヌ・ダルクの名誉回復裁判と表象の大量生産は時期が重なる。19世紀のフランス・ナショナリズムと密接に結びついて大量生産されたジャンヌ・ダルクの表象は、軍事的天才として現実に戦功を挙げた一人の女性を、虚構のシンボルに還元し、その歴史的意味を抹消したと講師は結論づける。ジャンヌ・ダルクは歴史から追放され、表象へ囲い込まれ、集団的心性の統合のための「空白の記号」として利用された。最後に講師はジャンヌ・ダルクの表象は今後、女性兵士の動員にも使われるようになるのではないかと指摘し、表象の使われ方を分析することは、社会や政治のあり方を分析することと同義であると強調した。

(文責 伊藤淑子)

演題:戦う女‐ジャンヌ・ダルクの史実と表象

2005年度言文研主催講演会

日時:2005年12月10日(土) 14:00−16:00
場所:津田塾大学1号館大会議室
講師:有賀夏紀先生(埼玉大学教授)
演題:「ジェンダーから見る9.11以降のアメリカ」

2005年度は、埼玉大学教授、有賀夏紀先生をお迎えして「ジェンダーから見る9.11以降のアメリカ」というテーマで講演会を行いました。

演題:ジェンダーから見る9.11以降のアメリカ

2004年度言文研主催講演会

日時:2004年10月25日(月) 13:00−14:30
場所:津田塾大学1号館大会議室
講師:大津由紀雄先生(慶應義塾大学教授)
演題:「言語の個体発生における生得と学習」

2004年度は、慶應義塾大学教授、大津由紀雄先生をお迎えして「言語の個体発生における生得と学習」というテーマで講演会を行いました。

演題:言語の個体発生における生得と学習

2003年度言文研主催講演会

日時:2004年1月27日(火) 15:00−16:30
場所:津田塾大学1号館大会議室
講師:鳥飼玖美子先生(立教大学教授)
演題:「多文化・多言語時代の言語教育」

2003年度は、立教大学教授、鳥飼玖美子先生をお迎えして「多文化・多言語時代の言語教育」というテーマで講演会を行いました。内容について詳しくは『言語文化研究所報第』第19号138ページをご覧ください。

演題:多文化・多言語時代の言語教育
— 異文化コミュニケーションの視点から—

第2回議論学国際学術会議 −議論と社会的認知−

日時:2004年8月3日(火)−5日(木)
場所:津田塾大学(東京都小平市)
主催:日本ディベート協会(JDA)・津田塾大学言語文化研究所

議論学国際学術会議の様子:シンポジウム(左)・終了後のレセプション

第2回議論学国際学術会議:議論と社会的認知(The 2nd Tokyo Conference on Argumentation: Argumentation and Social Cognition)が、津田塾大学言語文化研究所と日本ディベート協会 (JDA)の共催で2004年8月3−5日に開催されました。「議論」という人間生活の様々な文脈にかかわる行為についての関心が,近年高まりつつあります。すでに欧米では,既存の学科編成の枠を越えて専門的な学術誌や,国際学会が設けられてきました。

今回の会議は,議論学に特化した国際学術会議としては日本では初の試みです。議論研究は,従来,科学や司法における論証・論理学研究や,討論についての教育研究など,相互交流のないまま行われてきました。この会議は,議論を共通テーマとする様々な研究を媒介し,議論に関する探求を進めていく場を整備していくとともに,国際的な研究交流をより活発化することをねらったものでした。

1日目の特別パネル「日本におけるディベート教育を批評し,今後の展望を考える」では、百名を越える国内のディベート研究者と指導者の前でパネリストが活発な討議を繰り広げました。

基調講演は,認知心理学の権威の波多野誼余夫教授(放送大学)と,語用的弁証法の権威のFrans van Eemeren教授(University of Amsterdam),総括講演は全米ディベート協会(AFA)会長のGordon Mitchell教授(University of Pittsburgh)に行って頂きました。

2日目と3日目の研究報告では、世界15カ国を越える国々からコミュニケーション学だけでなく、法律学・哲学・言語学・歴史学・社会学・教育学など,幅広い分野からの70人を越える報告希望者が募り,テーマごとに部会・パネルに分かれて活発な議論が行われました。また報告原稿のうち水準をみたしたものは,全文を会議録(Proceedings)に掲載し,会議会場にて配布しました。 (文責:鈴木健)